こんにちは。皆さんは今までインシデントレートを書かなかったことはないと思います。
わたしも、新人時代から何度とインシデントレポートを書いてきました。
今まで、いくつもの病院で勤務し、医療安全委員会の委員長も経験し、インシデントの集計や分析、KYTトレーニングの院外研修や院内勉強会なども行ってきました。
インシデントレポートの様式から、病院の質や社風がすぐ判断つくようになりました。
今回は、インシデントレポートに対する姿勢からわかる病院の質について考えていきます。
インシデントとアクシデントとは
✅インシデント:ある医療行為が患者には実施されなかったが、仮に実施されたとすれば何らかの被害が予測される場合、あるいは患者に実施されたが、結果的に被害がなくまたその後の観察も不要であった場合をいいます。
✅アクシデント:医療事故に相当する用語で、インシデントに気づかなかったり、適切な処置が行われず傷害を引き起こすと医療事故となります。
インシデントレポートの目的
インシデントレポートは、組織でインシデントを共有することで、未然に事故を危機予測し、事故の再発予防することです。
また、インシデント分析を通して、重大な医療事故を予防する意義があります。
決して、インシデントを起こした個人を罰したり責任追及することが目的ではありません。
むしろ「情報共有やカンファレンスする機会を与えてくれたことに感謝すべき」だと、医療安全の院外研修で司会者は述べていました。
医療事故とハインリッヒの法則

ハインリッヒの法則では、300件のインシデントのうち、29件軽微な事故が起こり、さらに1件に重大な事故が起こるとされます。
0~1レベルのインシデントをどんどん挙げて情報共有や分析することで、類似する事故の予防や1件の重大な事故を予防するのが目的です。
インシデント報告でのメリット
インシデント報告による、いくつかの代表的なメリットは以下に挙げられます。
✅患者の安全性の向上や病院のシステムの改善
✅病院の透明性の確保
✅事故を未然に防ぐ危険予知能力と事前対策の向上(個人と組織全体)
✅個人のリスク分散
インシデント報告の4つの矛盾点
インシデント報告に関して、以下の4つの矛盾点が挙げられます。
なぜ職種間でインシデント報告数に差があるのか
なぜほとんどの医師は、インシデント報告書をかかないのかとの疑問があります。
看護師でも気づいたインシデントを医師は書かないし、師長や看護部長も「あの先生は困っちゃうわね」の一言で終わりです。
インシデントの目的は、組織で情報共有し分析することで、類似するインシデントや重大な医療事故を防止することが目的のはずです。
医師個人を責めるわけではないので、看護部や管理職から該当医師にインシデントレポートを書くように該当医師に指摘するべきです。
医師こそ、インシデントやアクシデント分析を行わずに放置していたら、患者の生命に関わります。
直接本人に言いにくい場合には、看護部経由で上席医や役職クラスからインシデントレポートを記載するように依頼するべきです。
また、看護部が医師に指摘できないなら、部下(看護師)にもインシデントレポートを強制する姿勢ではなく、「書いてもらってありがとう」と感謝の気持ちを持つべきだと思います。
病棟内で晒し者にするかのように、わざわざ朝礼で毎日のようにインシデント内容を蒸し返したり、インシデントの振り返りを、わざわざ大勢のスタッフがいる場で指導する管理職がいます。
そんな指導法では、余計なプレッシャーでかえってインシデントを誘発しかねず長く働けません。
組織的にも隠ぺい体質になるでしょう。
わたしの居た病院がまさにそうでしたから。
現場の看護師が最終確認者ということでいつも責任を問われる
最終確認者が看護師であることが多く、最終責任者(実施者)が最終的に責任を問われます。
インシデントの約30%は薬剤関係ですが、ダブルチェックに薬剤師が入るだけで防げる事例はたくさんあります。
処方切れにしても、主治医が処方する責任があるため、医師が処方切れを確認するのは当たり前です。
看護師だけでなく、医師や薬剤師も処方関連でインシデントレポートを書くようになれば、医師の意識や看護師の薬剤関連のインシデント件数も減少するのではないでしょうか。
ソフト面ばかりの対策ばかりでハード面の対策が乏しい
薬剤関連では6R確認不足、看護技術では手技の未熟さや煩雑さ、転倒転落では状況判断ミスなどでインシデントが発生していると分析されていますが、ソフト面だけの対策では限界があります。
行動制限の用具やセンサー類が充分あったり、点滴ラベルや採血のバーコード認証などの器具、病棟の業務量とスタッフ数がマッチしていれば防げる事故はたくさんあります。
ハード面の拡充がなければ、いつも同じ対策を挙げるだけで何も解決しません。

なぜインシデントレポートに氏名や職歴・配属歴を書かせるのか
インシデントレポートは、情報共有と分析のために記載するもので、決して個人を罰するものではありません。
本来は、インシデントを起こした本人が特定されるような氏名や職歴・配属歴を記載する必要はありません。
インシデントの分析に必要だとしても、インシデントの分析を1年ごとに区切ってまで詳細に行う必要はありますか??
看護研究ですら、看護歴や配属歴が1年ごとで区切られていません。
3~5年ごとに看護歴や配属歴は区分されているのが一般的です。
個人的には、そのようなインシデントレポートの様式は即座に改めるべきだと思います。
ホワイトな病院では、本人と特定されるようなレポートの様式にしていません。
インシデントレポート用紙も簡便明瞭です。
ブラックな病院では、未だに手書きを強要されていたり、事実のみ端的に記載すれば良いものを、ダラダラと長文かつ何度も再提出させてきます。
インシデントレポート報告書に時間を要する病院はブラック病院です。
医療安全管理者と院内研修
医療法における医療安全の確保の観点から、医療安全管理者は年2回程度の院内研修を行う義務があるのですが、院内研修が役立っていると実感してますか??
わたしの経験上、現場に責任転嫁や責任ばかり強いる病院の医療安全管理者ほど、全く現場のインシデントを分析してなかったです。
院外の医療安全講習をうけたものを、そのままテスト化しているだけで、そのテストに合格しても、全くインシデント防止に役立ちませんでした。
それ以前に、主任以下のほとんどのスタッフが回答を丸写ししてました。
医療安全管理者も、自身の認定更新のために講習やテストをやってるだけなので、現場の看護師にはその姿勢を見透かされています。
恐らく丸写しの件も分かっているのでしょうが、互いに暗黙の了解なのでしょう。
医療安全管理者の質も、病院の質を大きく左右すると考えられます。
インシデントレポートからわかる病院選択とまとめ
現場の個人レベルに責任をゆだねるものではなく、病院全体のシステムの問題ととらえ、ハード面の強化をしてインシデントを予防していく必要があります。

お勧めできる病院では、インシデントは個人の責任でなく、システムの未熟さによって生じたものと考え、積極的にハード面や他職種との連携を整えてます。
一方、お勧めしない病院では、システムを整えればいいものではないと、6Rや指先呼称、ダブルチェックなどの現場レベルの努力ばかり求めてきます。
いくら努力しても、常に新人や中途職員が入ってくれば同じミスはなくなりません。
現場のソフト面・ハード面での拡充が必要なのです。
看護部や医局経由で、ソフト面よりハード面の拡充を依頼していきましょう。
最終的には、病院長(医師)と看護部の力量次第であり、現場任せで設備投資しない病院は、いつまでたっても同じ類のインシデントを繰り返すのみです。
もしそのような病院で働いていたら、なるべく早期に他の病院に移動することをお勧めします。
病院全体でインシデント対策を講じなければ、スタッフも疲弊し離職者は増える一方で、ますます業務量の負担が増えてインシデントが増え、重大な医療事故を起こしかねません。
インシデントレポートを病院全体の問題ととらえて、重大なアクシデントを予防するために、インシデント内容からハード面やソフト面を拡充できるような病院を選択しましょう。
自分を大切にしてください。あなた方だけでなく大切な家族のためにも。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ひろくま(HIROKUMA)
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