皆さん、こんにちは。
患者の食事量が低下したり、誤嚥リスクが高い患者では、TPN以外や胃瘻(PEG)以外に、看護師でも実施できる胃管を挿入し、経管栄養を実施している病院や施設は多いと思います。

胃管栄養って、胃管(NG)チューブの先端が胃に入っているかを、いつも気泡音だけでチェックしているので心配でこわいです。

そうだよね。胃管チューブの医療事故は毎年多く報告されているんだ。胃管挿入や胃管栄養時の確認方法について、医療事故をもとに予防対策を考えていこう。
胃管挿入に関する医療事故
胃管の誤挿入関連では、気管や胸腔・肺などに誤挿入したインシデントが数多く報告されています。
また、食道や胃を穿孔する危険性があるため、医師以外は挿入できない病院もあります。
一番多い医療事故は、気道に誤挿入された状態に気付かずに栄養剤を注入し、肺炎などの重篤な合併症を引き起こすことです。
なかには、障害の残存や死亡事故につながった事例もあります。
そのため胃管が胃内に確実に留置されたことを確認することが何より重要です。
それは、看護師の皆さんなら良くわかっていると思います。
では実際に、胃管が胃内に挿入されたことを、どのような方法で確認していますか??
一般的な胃管挿入の確認手段
おそらく、一般的な病院であれば以下の方法で確認をしているでしょう。
✅胃管挿入時、気泡音をダブルチェックで確認する
✅胃管挿入時、カテーテルチップで胃液や胃内容物の逆流有無を確認する
✅胃管挿入後、XP検査で胃内に胃管チューブ先端が留置された状態か医師が確認
胃管挿入時、ダブルチェックで気泡音を確認するのは、どこの病院でもやっていると思います。
同時に胃液の逆流有無も行っているでしょうが、皆さんもご存じの通り、胃液の逆流はない場合も多いのが現状です。
もし、胃管挿入後、今時XP検査で胃管チューブ先端の位置を確認しない病院は少ないと思います。
万が一、XPで確認せずに実施している病院に勤務しているなら、早急に改善を要求すべきです。
胃内要物のPHチェックを代用している場合にはまだ理解できますが。
XP検査もしないような医療安全の体質だと、何か医療事故が起こっても、実施者に責任転嫁させられる可能性があります。
もし、院内の胃管挿入のマニュアルがない場合には、早急に医療安全委員会や業務委員会にマニュアル作りを依頼しましょう。
万が一事故が起こったときに、病院ルール通りに施行したと自己防衛するために必要です。
胃管挿入後の確認手段と有効性
胃管挿入時は、XPでチューブ先端が胃管に挿入された状態であっても、患者の咳嗽でいつチューブ先端が胃管から逸脱するかわかりません。

また、気泡音はカテーテル先端が食道部にあっても、気泡音として聴取される場合があるため、気泡音がある=胃管に留置された状態とは限りません。
胃液や胃内容物の逆流有無については、先ほど述べた通り、カテーテルチップで引けないことも多いのです。
カテーテルチップで空気が抵抗なく引ける場合には、気管に挿入された可能性があります。
逆に、空気が引けないからといって、胃内にチューブが留置されたとは限りません。
胃管挿入後の他の確認手段
上記の3つの確認方法以外に、他に胃管チューブの先端が留置された状態か確認する4つの手段について考えていきます。
胃管チューブからの吸引物のPHチェック
胃管チューブからシリンジで吸引した吸引物のPHをチェックすることで、胃内に挿入されているかを確認している病院もあります。
現実的に毎食投与前にその都度チェックするわけにはいかないため、胃管挿入後の初回投与前や、週に1回程度の確認時などに有効な手段の1つだと考えられます。
あくまでも、胃液が吸引できればの話ですが。
口腔内で胃管チューブが見えていないかを確認
胃管チューブを挿入している患者では、基本的に絶食の患者なので、毎食の経管栄養前に口腔ケアや適宜吸引を実施していると思われます。
その際に、口腔内に胃管チューブが見えた状態にないかを確認しましょう。
まれに、口腔内でチューブがどくろを巻いていることもあります。
栄養剤投与前に少量の白湯をフラッシュする
栄養剤と白湯投与による胃内容物の増加に伴う逆流予防から、現在は、白湯→栄養剤の順番で経管栄養を実施している病院がほとんどでしょう。
胃管チューブ先端が胃から逸脱していれば、少量の水分でもむせ込みがあると考えられます。
少量の白湯をゆっくりと注入もしくは滴下して咳嗽やむせ込みがないかを確認しましょう。
さらに、トロミ剤入りの少量の白湯をゆっくりと注入するのが一番安全性が高い気がします。
個人的に、一番ここが重要だと思います。
もしここで異常があれば、リーダーや医師に相談しましょう。
この段階で気づけば、例え少量の水分を誤嚥した程度であればリカバーできます。
引き続き白湯や栄養剤を投与するのは絶対に避けましょう。
必要な検査をして、経管栄養を数時間遅れて投与したり、1食抜くことになったとしても、患者の安全が最優先です。
いざとなれば、経管栄養の代わりに点滴で補正することは可能です。
経管栄養の接続部を水に浸してエアの有無を確認
胃管チューブの接続部を水に浸すと、気管や肺に誤挿入時にエアが出てくる場合があります。
絶対ではありませんが、一つの判断材料として役立つ可能性があります。
経管栄養投与時の患者観察
経管栄養中は、異常の早期発見のため、投与開始数分後に一旦訪室して、咳嗽や頻呼吸など呼吸状態の変化、喘鳴の有無などを観察しましょう。
もし上記の変化があれば、すぐに経管栄養を中止します。
呼吸音の聴取やVS測定し、誤嚥の徴候があれば、吸引や酸素投与、モニター装着しましょう。
患者状態に応じて観察室に移動し、主治医にすぐ報告も必要でしょう。
「つねに胃管チューブの先端が胃から逸脱しているかもしれない」と想定することが、異常の早期発見につながります。
まとめ
看護師は、常に多重業務に追われています。
術後患者や手術前の準備、緊急入院、重症者や認知症患者対応、点滴管理やトイレ誘導など、看護師はつねに分単位で仕事を組み立てています。
胃管栄養も1人ならともかく、脳外科などでは10人以上の経管栄養もザラです。
しかし、どんなに多忙であっても、自分自身や患者の安心・安全のために、かならずダブルチェックでの気泡音の確認や口腔内をチェックしましょう。
投与開始後の患者状態の観察も必須です。

常に、医療事故の可能性を視野に入れて、医療事故の予防対策(知識)や異常の早期発見につとめていくことが必要です。
先ほど述べた通り、胃管挿入や挿入後のマニュアル作成も必須でしょう。
自身はマニュアル通りに実施していたと主張できるため、自己責任を回避するためにも重要です。
本当に大変ですが、患者と自身の安心・安全のために配慮して欲しいです。
この記事が、胃管栄養について少しでも知識の共有や情報発信につながれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ひろくま(HIROKUMA)
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