脊椎外科の専門病院や有床クリニックってどんな所か想像つきますか??
わたしは、整形外科や消化器を含む混合病棟で数年間勤務していた際、もともと脊椎疾患にとても興味があり自己研鑽していました。
懇意にしていた脊椎外科医より「脊椎のスペシャリストを目指してみたら」と勧められました。

10年以上、脊椎関連の疾患に携わり、脊椎専門病院でも数年働きました。そのなかで、看護師200人程度と一緒に勤務してきた経験から、脊椎専門病院の特徴や働くメリット・デメリット、就職後のキャリア形成について徹底解説していきます。
脊椎専門病院の特徴

脊椎病院の特徴ってどんなイメージを持っていますか??
まずは脊椎病院の特徴を知ろう。
🌟脊椎病院の特徴
🔵基本的に手術に特化した病院が多く、保存療法の患者は入院しない
🔵緊急入院は基本的にないが、時折手術後の感染や体動困難での緊急入院がある
🔵夜間は検査技師が居ないため緊急入院はない
🔵夜勤の休憩時間は基本的に3~4時間はとれる
🔵基本的に2人夜勤のため、1人で対応する時間帯がある
🔵医師ファーストの体質があり、医師の代行業務が常態化している施設がある
🔵医師によってやり方が異なることが多く、各医師に応じた介助や報告の仕方が必要
🔵業務がシステマティック化されており、それ程脊椎の知識・技術を必要としない
🔵術前・術後は主治医以外に、非常勤の内科医や麻酔科医などがサポートしている
脊椎専門病院で働くメリット
🔴脊椎疾患や術式について専門的知識や技術を深められる(個人差が非常に大きい)
🔴脊椎手術が週に10数件あるため、術前・術後の手術期管理は一通り習得できる
🔴基本緊急入院がなく夜間の緊急入院がない。急変も少なく精神的・肉体的に気楽
🔴脊椎単科のため、他の整形外科手術がなく、システマティックに働ける
🔴休憩時間はほぼ確実に取れる。年末やお盆などは手術はなくかなり楽
🔴希望を出せば、外来や手術室などへのローテーション業務も可能
🔴1度業務や最低限の知識・技術を習得すれば、他科への異動もなく気楽
🔴長期の休みも比較的取得しやすく、総合病院より有休消化率も良い
🔴委員会や係の仕事はほとんどなく、総合病院と比較し時間外残業や業務量が少ない
🔴看護研究や大学病院のようなプリセプター制度がないため気楽
脊椎専門病院で働くデメリット
🔷脊椎疾患以外について知識・技術の習得は少なく、特に他科の知識・技術が衰えがちになる
🔷脊椎疾患以外の疾患については、習得できる疾患は限られる
🔷脊椎専門病院で長く働くほど、単科かつ専門化しているため、総合病院への復帰を躊躇する
🔷病棟内で馴染めないと、他科がないため異動するには手術室や外来を検討するしかない
🔷手術室看護師になると、専門性が高すぎるため、転職は他の脊椎専門病院を検討しがちになる
🔷脊椎専門病院でも、単なる受け身の姿勢だと、数年いても知識・技術は深まらない
🔷手術室や外来などで欠員が出ると、部署異動を依頼される可能性はある
🔷ラダー制度がなく教育制度に力を入れておらず、その後に総合病院に転職するとかなり苦労する
🔷急変はほとんどなく、前職での経験がないと、急変時対応に対処できるスキルは身に付かない
🔷夜間は1人休憩に入ると、3~4時間を一人で対応するため、ある程度の経験はないと不安
🔷しっかりとした評価表がないため、業務や委員会で貢献しても評価されるとは限らない
🔷単科病院であるため、給与水準が低め病院が多い
脊椎専門病院でのキャリア形成
脊椎専門病院は脊椎だけに特化しているため、長く働く程、脊椎のスペシャリストになれる可能性は高まります。
ただし、業務はシステマティックに管理されてます。
チェックリスト表を使用すれば、脊椎の知識や技術はさほど必要とされません。
よって、単に長く働くだけでは脊椎のスペシャリストになれません。
また、脊椎に特化しているため、
他の整形外科疾患や技術、特に他科の知識や技術を使用する機会がほとんどありません。
よほど自己研鑽や院外研修に参加するなどしないと、習得した知識や技術が衰えて、長くいるほど総合病院や大学病院への復帰を躊躇するようになります。
今までのキャリアや今後の転職が心配な場合、脊椎単科の病院を選択しない対策もお勧めです。
総合病院や整形外科単科の病院で脊椎疾患に強みのある病院を選択したり、
脊椎とプラスして膝・股関節・肩関節などの手術をしている関節脊椎病院を選択するのもありです。
新卒から入職すると、
●総合病院で1~3年目で学習できる基礎的な看護技術、
●ある程度のメジャーな疾患の知識、
●看護記録やプリセプター業務、
●急変時の対応や薬剤の知識、
●チーム会やクリニカルパス、
●委員会業務や看護研究などの知識がほとんど習得できません。
夜勤は看護師2人体制のため、夜間1人休憩中(仮眠中)の場合は、
1人で患者対応やトイレ誘導したり、医師に必要時報告する必要性もあります。
ある程度の外科的経験がないと、医師から叱られたり、患者のクレームに繋がる場合もあります。
特に、頚椎前方除圧固定術後の場合は、総合病院や大学病院と異なりHCUやICUがないため、術後の上気道閉塞(咽頭浮腫)に注意が必要です。
また、術後に肺塞栓や下肢静脈血栓症、脳梗塞などになると、緊急で転院するため、
必ずしも急変時対応がないわけではありません。
術後肺炎や敗血症などになり、CVの挿入や再挿管、なかには転院する症例もあり、
単科でも他科の知識や急変時の看護技術はある程度要求されます。
とは言っても単科であるため、ずっと同じ病院で働いたり、他の脊椎専門病院に転職するのであれば問題ありませんが、
総合病院や大学病院に退職後転職したい場合には、長くいるほど勇気がいります。
普段から、他科疾患や技術について自己研鑽したり、院外研修に参加するなどして、
自分のスキルを保持する努力が必要です。
脊椎専門病院の今後の展望
脊椎専門病院は、脊椎手術の診療報酬が高いため、現時点では、業務量のわりに年収の高い病院は複数あります。

ただし、それは現状の話です。
股関節や膝関節手術の診療報酬も同じでした。
今後、脊椎関連の診療報酬が下がる事態になれば、看護師の年収に直結してくると思われます。
また、ここ十年で脊椎手術を行える施設も増え、脊椎専門病院も割拠しています。
さらに固定術などの手術侵襲の高い手術より、内視鏡での低侵襲手術が浸透してきてます。
固定術や骨切り術などの、高い診療報酬やインプラント代で稼ぐ手段は厳しくなるでしょう。
実際、今年度インプラントの診療報酬が数十%引き下げられています。
脊椎疾患に対するスペシャリストを目指すのであれば、一度経験するのはありです。
わたしは、脊椎専門病院で勤務して、脊椎に特化したなかで働けた経験はとても貴重な体験でした。
その後、整形外科を含む混合病棟で勤務してますが、脊椎疾患については他のスタッフの誰より知識や技術は高いです。
また、脊椎疾患や術式について詳しくなると、脊椎外科医との距離感がなくなり信頼感も抜群に高まります。
専門性が高く、医師と脊椎の話で盛り上がったりもします。
他の整形疾患や手術では、脊椎ほど専門性や特殊性は高くないため、医師との距離感は脊椎とは全く異なります。
医師と術前術後の管理の話はしても、疾患や術式で盛り上がることはまずありません。
脊椎専門病院には、大学病院や総合病院で勤務するのに疲弊して一時的に就職する看護師もおり、入職してくる理由はさまざまです。
皆さんの脊椎専門病院で働くかどうかの参考になれば幸いです。
補足事項
脊椎専門病院は主に個人病院で社風も独特です。
医師の代行業務が常態化している病院も複数あります。
法律的には代行業務は完全にアウト(違法行為)です。
看護師が代行処方や画像の検査オーダーを行って、
何か問題があった場合には、看護師免許の剥奪される恐れがあります。
面接時に確認して、代行業務を行っている病院は避けた方が良いでしょう。
過去に「手術中などどうしてもの時だけだから」と釈明する看護部長が居ました。
何の弁明にもならず、医師以外が処方や検査のオーダーをすることは重大な法律違反です。
手術中でも、手術していない外来の医師や、手の空いてる麻酔科医にも依頼できます。
口頭指示を一時的にもらって、指示を出した医師が後で入力するなどの工夫も可能です。
手術中に指示を出さなければならないような切迫した事情なら、それこそ医師に頼むのが筋で、法律違反(保助看法)をまったく正当化できません。
何か起きても、残念ながら自己責任です。
せっかく必死に数年かけて、きつい実習生活や受験勉強して取得した看護師免許を失いたくないし、失ってから後悔しても遅いです。
そんな脊椎専門病院はまれですが、脊椎の手術件数ランキングに掲載される病院でも、複数の施設で存在するのでご注意ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ひろくま(HIROKUMA)
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